大百科 限界なんて二時間前に いっ、痛い!

「痛ぁぁぁぁぁいぃぃぃ」
図書室で誰かが叫んでいる。
そこは本来静かに保たれるべき部屋にもかかわらず。
俺は気になって中をのぞきこんだ。
「こりゃひどい」
そこには雪崩を起こした本の山とそれに巻き込まれたらしい人間およびかつては本棚だったらしい木の枠があった。

別に学校に用事があって残ってたわけじゃない。
今日は午前授業で午後まで学校に残ってるやつなんてほとんどいなかった。
俺は屋上で昼寝をして帰るところだった。

「図書委員でもないのにゴメンネ〜〜♪」
彼女は言葉ほどそうは思っていないように見える。
・・・のは気のせいか?
「俺も暇だったし、気にしないでよ」
本当は本の山から助け出したところで立ち去るつもりだったが、助け出した彼女の顔を見て気が変わった。
・・・長い髪の毛と気の強そうな顔
もろにタイプの顔だった。
「しかし普通本棚が壊れるか?」
俺は本の山の向こうのいまだそのままになっている本棚の残骸を見ながらそういった。
「あはは。あれ実は先月ひびが入って廃棄になった本棚なんだよね」
「えっ?これはひびどころじゃないと思うけど」
すると彼女は少しうつむいて
「本の整理に便利だから先生には内緒で使ってたの」
と、俺のほうを見て
「お願い。先生にはあなたがふざけてて壊したってことにしてくれない?」
「何でそうなる?」
「いいじゃない。あなた結構やんちゃみたいだし」
ひどい言われようだなおい。
大体さっきはじめて会ったばかりではなく後かたづけまで手伝ってもらってる人に言うことか?
違うとは言わないが。
「それにしてもよくさっきまで持ったな」
話を変えるつもりで俺はそういった。
さっきまで本棚に入ってたのは(つまり雪崩を起こしてたのは)とある有名な百科事典だった。
一つ一つはそんなに厚くないとはいえ100巻近くあるかなりの大物だった。
「それ、今週中に整理して近くの大学に送んなきゃいけなくてそれで全部持ってきて貸出票に書いてたんだけど・・・終わる前に本棚のほうが壊れちゃった」
えへへ。と若干恥ずかしげに笑う彼女に俺はつい見とれてしまった。
「ん?なに?」
「い、いや・・・壊れる前に気がつかなかったの?これだけ派手にいっちゃってたら音ぐらいしそうなもんだけど」
「う〜ん・・・あ、そういえば2時間くらい前からミシミシいってたかも」
それじゃあ二時間も前から限界だったのか。よく二時間も持ったな。
「そういえばその貸出票にうつすのもう終わったの?」
「うん。おかげさまでね」
「じゃあそろそろ帰ってもいい?」
話しながらも作業をしていたおかげですっかり片付いていた。
「あっちょっと待ってて。御礼もしなくちゃいけないし。」
と彼女はばたばたと帰る支度を始めた。
その姿に見とれていると彼女と目が合った。
「ところで、自己紹介がまだだったよね。」

(2006・3・7投稿)


垂れる 美少女 昼休みの休息

彼女にはじめて会ってから3日後の昼休み。
いつも道理に教室で弁当を広げたまさにそのときに携帯にメールが入ってきた。
『お昼一緒に食べない?』
『OK』
と返信し、からかう悪友を巻くために回り道をしてから階下にある一年生の教室に向かった。
「こんにちは」
「おう」
彼女は既に教室の入り口前に立っていた。
しっかり手入れの行き届いた長い髪の毛にちょっと上がった目尻と眉毛。
絹のような白い肌。
一般的に言ってもかなりの美少女ではないだろうか?
そんなことをしみじみ思っていると、
「屋上行きません?」
というのでそのまま屋上へ向かった。
合鍵で鍵をあけ屋上に出る。
「先輩ずる〜い。こんなところの鍵持ってるなんて。」
「先生やほかのやつらには内緒にしてくれ。ここは俺専用の昼寝場所なんだ。」
鍵は去年自分ですり替えた。今のところ気づいたやつはいないようだ。
二人して入り口からは死角になるような場所に行くと、弁当を広げる。
「今日はサンドイッチ作ってきたんだ〜♪」
見ると卵だけのやつの他にトマトとレタスのサンドイッチもある。
「半分あげる」
「おっサンキュー」
とりあえず自分のはほっといてサンドイッチから食べることにした。
「うまいなこれ。自分で作ったの?」
「うん。あっ先輩垂れてるよ」
トマトが原因か、かぶりついた反対側から手に垂れている。
「仕方ないな〜ちょっと手、かして。」
「ん?」
サンドイッチを全部口に放り込んで手を差し出した。
「!!  なっ・・・」
その手を彼女はペロッとなめて う〜んまあまあかな とか言っているが俺はそれどころじゃない。心臓がどくどくいって呼吸まで苦しくなっている。
「あはは。先輩顔真っ赤〜」
誰のせいだ。誰の。

(2006.3.14投稿)


毎日が 節分

子供:豆なんかもう食べたくないよ〜
鬼:いい加減に家に入れてくれ〜
福:ただいま品切れ中です。
次回の入荷は来週になります。

(2006.4.29投稿)


降参します・・・ 熱くて酷くていっぱいの 苦いビターチョコ

はじめて彼女ができて迎えたバレンタインデー。
期待に胸膨らませながら放課後に彼女の家まで行った。
「これ・・・ちょっと失敗しちゃったけど・・・」
そういいながら彼女が出したのは湯気が立つほどあつあつのホットチョコレートだった。
「ちょっと熱いけど・・・いただきま〜す」
ふぅふぅ、ズズ〜・・・・オェ
味は・・・まず苦味が来てその後を追うように酸っぱさと辛さが・・・
「ちょ、ちょっと聞くけど一体何を入れたの?」
「甘いのがあんまり好きじゃないって言ってたから・・・」
聞かなきゃよかった。
彼女が入れたものは想像を絶する「もの」だった。
思い出したくもないがその中のひとつが摩り下ろしたゴーヤーだといえばおおよその想像は付くだろう。
「まだまだいっぱいあるからたくさん飲んでくださいね♪」
その日、降参するまで何杯も飲まされた。
翌日学校を休んだのは言うまでもない。

(2006.5.3投稿)


誕生 最新式 婦人警官

・・・それでは次のニュースです。
昨日行われた最新式アンドロイドの発表会では、
専門家やマニアなど合わせて10万人の人々が詰め掛けました。

「ご覧ください。ものすごい人でにぎわっています。あっあれが噂の最新式婦人警官型アンドロイド『逮捕なんだからっ』のようです。周りにはカメラや携帯を手にした人がまるで壁のように群がっています。」

―――この最新式婦人警官型アンドロイド『逮捕なんだからっ』は3年前の大阪道路100台玉突き死亡事故の教訓から、違法駐車やスピード違反をより厳しく取り締まるために国と大阪府が開発したものだ。このアンドロイドの一番の売りはなんと言ってもツンデレな性格だ。従来は違反者に優しく語り掛けるものが主流だったがツンデレ萌えな人々には不評だった。これを機にツンデレ萌えな人のハートをがっちりつかむ作戦だ。
外見は20歳くらいで身長は170cmとやや高め。性格はお姉さんタイプに設定されている。名前は大阪府民の公募により決定した。

「これから『逮捕なんだからっ』の交通違反取締りの実演が行われます」

速度違反者発見!直ちに取り締まりモードに移行します。
あんた自分でスピードの確認くらいできないの?20kmもオーバーしててよく平気で道路が走れるわねっ。ほら、違反切符よ。ありがたく受け取ることね。えっ?もうしないから許してくれ?甘いわね。私はこれが任務なのよ。ほらっおとなしく受け取りなさい。(もぅ私だって好きでやってるんじゃないのよ?あなたが法律を守って運転してくれればもっと優しくしてあげられるのに)え?何か言ったか?なっなんでもないわよ。それじゃ、ちゃんと速度は守りなさいよ。

私もこんな風に取り締まられてみたいものです。では次のニュースです・・・

(2006.5.5投稿)


本当に女の子 だった?

新宿二丁目で見たあの子。

(2006・5・25投稿)


地下にこんなものが!? どちらかというと 商売

私の家には地下室がある。
普段は立ち入ることができないけど、ひょんなことから地下室の扉の鍵を手に入れた。
ギギィ〜〜
あまり使われてないからなのか、扉がきしんだ音を出しながら開いた。
中は当然ながら真っ暗。
私は手に持った燭台に火をつけ、自然と足音を忍ばせながら地下室に入っていく。
―――馬鹿じゃないの。誰かいるわけでもないのに。
そんな風に強がってみても、恐怖はぬぐえない。
なぜなら、我が家には地下室にまつわる怪談がいくつもあったから。
曰く、『地下室から不気味な声がした』
曰く、『地下室には光る壁があり、そこは異次元につながっている』
などなど、どこにでもあるようなものなのだけど。
ふと私はある壁の前で足を止めた。
「壁が・・・ほんとに光ってる・・・」
手を伸ばして触ってみる。
すると・・・
ゴゴゴ・・・
いきなり横に動いて壁の奥に通路があらわれた。
ゴクリ
私は震える足に喝を入れながらその奥に進んだ。
コツコツコツ
自分の足音がやけに響いて聞こえる。
通路はなぜかほのかに明るかった。
しばらく歩くと、目の前に扉が現れた。
少し考えてノックをする。
コンコンコン
「どうぞ」
普通に返事が返ってきて驚いてしまった。
「どうぞ、あいてますよ」
いまさらながら帰りたくなってきたがもう遅い。
震える手で扉の取っ手をつかみ、軽く引く。
が、開かない。
「?」
少し考え、今度は押してみる。
が、やはり開かない。
「えっ、なにこれ?」
思わず声を上げてしまった。
「これは横にずらす扉ですよ、お嬢さん」
はっ恥ずかしい・・・
きっと顔は真っ赤になっていることだろう。
でも、ここまで来て中を確かめないことには夜眠れない。
ふぅ
よし
三度とってに手をかけて横にずらす。
「いらっしゃい」
「えと、ここは何なんですか?なんで私の家の地下にこんなところが?」
「ここは私がやっている趣味の店です。といっても商品は置いてないんですけどね」
何を言っているのかよく分からない。
大体趣味の店なのに商品がないって何?
それよりお客さんなんて来るの?
「ああ、あなたがはじめてのお客さんですよ。今日は来店記念にただで注文を受けて差し上げますよ?」
「はあ、それはどうも」
注文って言っても賞品がないんじゃ何も買えないじゃない。
「どうぞ、お好きなものをご注文ください。ここには何もないのでお届けするのに数日かかりますが」
「本当に何でもいいの?」
「ええ。どうぞ」
「では・・・私の病気を治す薬をください。」
「かしこまりました。では数日で用意いたしますので取りに来てください」
「本当に用意できるの?お医者様でも私の病気は治らないって言ってるのに・・・」
「さっき趣味の店といいましたが、どちらかというと商売が趣味なのですよ」
やっぱり意味が分からない。
なんで?と首をかしげると
「商売である以上できないものはできないとちゃんとお断りいたします」
そういうもんなの?
あぁ、そろそろ部屋に帰らないと誰かが気づくかもしれない。
「おかえりですか?」
「ええ」
「では、またのお越しをお待ちしております」

帰る道々、私は今の出来事を反芻した。
そういえば、お店の人って男だっけ女だっけ?
それどころか、顔も思い出せないことに気づく。
夢みたいな曖昧な感じ。
地下室まで戻ると、急いで鍵を掛け自分の部屋に戻った。

それから2日間は無理がたたったのか高熱に苦しんだ。

そして3日目
だいぶ体がましになった私は再びあの場所へ行くことにした。
地下室へ降り、壁から通路に入る。
しばらく歩くとあの扉が見えてきた。
コンコンコン
「どうぞ」
取っ手に手を掛け引いてしまってから横にずらすのを思い出し一人顔を赤くした。
「いらっしゃい。薬は用意できてますよ」
はい、と丸い緑色の飴玉みたいなのを手渡される。
「ありがとうございます。でもこれ、本当に御代はいいんですか?」
「ええ。でも、次に注文されるときに多少色をつけさせていただくので覚悟していてください。なにせ」
「「商売ですから」」
クスクス
笑ったのって何週間ぶりだろう。
もちろんこの薬が本物だとは思っていない。
たとえ薬だとしても効かないかもしれないし毒かもしてない。
でもこんなに幸せな気分になったんだからどっちでもいいかな。
私は満ち足りた気分のまま部屋に帰り、薬をなめてそのまま寝てしまった。

どうやら薬は本物だったらしい。
余命一ヶ月といわれた私だけど、その一ヶ月がたつころには病気は完治していた。
医者が何度も奇跡だと繰り返していた。
あれ以来地下室には行っていない。
あのお店の人には気の毒だが、もうしばらくあの店の存在は私だけの秘密にしておきたい。
でも、近いうちにあのお店に再びお世話になりそうな気がする。
そのときに私は何を頼むのだろうか・・・

(2006・7・2投稿)


夏 ミニスカ DVD

お兄ちゃんの部屋でミニスカと書かれたDVDを発見した夏休みのある日。とってもアダルトなにおいがする。
お兄ちゃんは昨日から合宿へ行っているし、家には誰もいない。
・・・見ちゃおっかな♪

―しばらくお待ちください―

げぇ〜〜。見るんじゃなかった。
中身はミ○ーマウスのスカートベストコレクション(映画編)。3分で我慢できずに止めたけど、こんなのどこが面白いのかしら?
お兄ちゃんって・・・変態?

(2006・7・26投稿)


越えていけるさ オコサマ専用

全いんせいれつ!
てんこ・・・よし!
われわれはこれから大いなるしれんに向かわなくてはならない。各いんけんとうをいのる。

45分後

かくいんせんかをほうこくせよ。
なにっキリンさんすべり台があったとは。
まさか風せんプールまで・・・
ということは部たいは全めつということか
くそっ
次こそは・・・次こそは・・・オコサマ専用遊び場のゆうわくからのがれてやる。

しかし彼らは最初からここがオコサマ専用休憩室であったことを知らない。

(2006.8.18投稿)


そこまでやるか? 神がかり的な 味塩

―――全日本炒め物選手権
隔年で開かれるそれは全国の素人しか参加できない。
優勝者には名誉だけが与えられると言う。

「お〜〜っと、三番がとうとう炒め始めた〜〜!もはやこの手さばきはプロと言っても過言ではない!野菜が宙に舞ってまるで津波のようだ!!」

「4番もいった〜!おや?こちらはおとなしい動き、左手に持っているのは・・・水溶き片栗粉だ〜!それをフライパンに放り込んだ〜〜〜!!」

「ここで本命の1番がフライパンに手をかけた!そして・・・おや?この具材はまさか・・・チャーハンです!1番のメニューはチャーハンです!そして・・・出ました!!これまで二連覇を達成したときにも出た味塩!――『アジシオ』ではなく『味塩』だそうですが――まるで何かが取り付いているかのごとくかける!かける!かける!!これはもはや神がかっていると言っていいでしょう!」

「お〜〜〜っと!ここでタイムアップ!!これから審査に入るようです」

「第24回全日本炒め物選手権優勝者は・・・1番のマリアさんです」

「ありがとうございます・・・こんな私に・・ぐすっ・・・これからも一生懸命がんばりますっ」

―――全日本炒め物選手権
今ようやくその戦いは終わった・・・

(2006.8.25投稿)


ピコピコハンマー フルスイング 呪術

「どぉりゃ〜〜」
「ぐぅぉりゃ〜〜」
「ぅぅぅおりゃ〜〜」
それはあるダンジョンの主との戦闘の最中
近くの酒場で雇った魔導師はおもむろに懐からピコピコハンマーを取り出すとやたらと気合をこめて降りはじめた。
『・・・』
主ですら目を点にしてきょとんとしている中、彼は一心不乱に振り続けている

しばらくして

「どう・・・だ。この・・わたし・・・の・・・じゅじゅつは・・・」
肩で息をしながら勝ち誇ったような表情を浮かべる。

『効くかボケェ〜』
一同(主含む)の放った蹴りが魔導師を沈黙させた。
結局、このことがきっかけで一同と主と友達になった。
そして帰りの近道と宝物のありかを教えてもらい、一同(除魔導師)はダンジョンを後にした。

魔導師の行方は誰も知らない。

(2006.8.29投稿)


back